試練

 その日、 僕は大聖堂に赴いていた。
無論、 人々を癒す職業・・・・・・アコライトになる為だ。


「アコライトか・・・・・・ならばモンク、 またはプリーストになるのだな」
「はい、 僕はプリーストになるつもりです」
「ほう・・・・・・何故?」
「人を助けられる職業だからです、 リヴァルさん達騎士の方々もそうだと思いますが、
プリーストとなって色々な人を支援して、 助けたいと思ったからです」
「立派な心がけだ、 だが道のりは辛いぞ?」
「覚悟の上です」
「・・・・・・そうか、 ならば良い」


 リヴァルがカズヤを見た時、 彼の瞳に迷いは無かった。
素直で真っ直ぐな性格の子だ、 もし本当に彼がその様な聖職者になれたらどんなに素晴らしいだろうか。
無論苦難の道だろう、 支援型プリーストになるには血の滲む様な努力が要求される。
それでも目指したいと言うのならば、 私のする事はもう決まっているのかも知れない。


「さぁ、 ここで受付をして神父様に会うのだ」
「はい!」


 元気良く返事を返してくるカズヤに軽く手を振る。
距離にしたら短い、 椅子のある場所と神父様が立っている間の僅かな距離。
付いていっても良かったのだが、 自立する事も忘れてはいけない。
私が常に居る訳ではないのだからな・・・・・・
無論これは自惚れだろう、 彼は一人でも努力してここまで来れただろう。
それでも、 保護者のような気分になってしまうのは仕方の無い事だろうか?


「リヴァルさん、 それでは行ってきますね」
「ん、 ああ・・・・・・何処になったんだ?」


 物思いに耽っていた私に、 カズヤの元気な声が聞こえる。
どうやら話は終わったらしく、 既に外へ出て行く気を満々のようだった。



「聖カピトリーナ修道院です、 その場にいる修道士様に会うのが僕の試験です」
「そうか・・・・・・では、 行こうか?」
「あ、 リヴァルさんはここで待っていて下さい」


 椅子から腰を上げ様としたのだが、 カズヤに止められてしまう。
どうしたのだ? と思い彼を見る。


「リヴァルさんにはお世話になりっぱなしですから、 今回は僕一人で行ってきます。
何処まで教わった事を生かせるか、 また自分の実力がどの程度のものなのか知りたいので・・・・・・」
「・・・・・・そうか、 分かった。 帰ってくるまで待っていよう」
「はい、 では行ってきます!!」
「ああ、 気をつけてな」


 心配する必要は無かったか・・・・・・
小さくなっていく彼の背を見送り、 久しぶりに大聖堂で祈りでも捧げてみよう。
無論、 祈る事などたった一つしか無いのだがな・・・・・・