ポリン島

 プロンテラ南より少し歩いた場所に、 ポリン系統の魔物ばかりが住んでいる場所がある。
通称ポリン島、 初心者の練習場としては定番な場所であった。


「私は基本的に見ているだけだ、 自分の思ったとおり行動して良いぞ」
「はい、 分かりました」


 手始めにとポリンと戦い始める。
攻撃は体当たりだけなのだが、 それなりにダメージは受けるし下手に受ければ怪我をする。
ナイフでポリンを叩き、 体当たりを上手く避けながら攻撃していく。


「ほら、 腰が引けていては倒せるものも倒せないぞ」
「は、 はい!!」
「相手の動きを良く見るんだ、 見えれば怖くは無いぞ」


 人は見えない事の方が怖いと言う、 つまり攻撃も見えれば怖くないとの事なのだうろか?
だが実際戦っている本人としては、 攻撃されれば怖いし当たれば痛い。
あまり実戦慣れしていない者に怖がるな と言うのも無理な相談だろう。


「も・・・・・・もう駄目・・・・・・少し休憩です」
「上出来だ、 無理はしないその行動は良いぞ」
「そうですか?」
「そうだ、 危険だと思ったらそれを避ける努力をする。 無理だと思ったら止める。
その様な姿勢は何処でも大切だ、 それは自分の命を守る」
「なるほど・・・・・・分りました」
「命を第一に考えろ、 名誉、 栄達、 賞賛・・・・・・そんなもの、 命と比べれば何とも虚しい事だ。
称えられる事を目指すな、 と言っている訳ではない。
称えられる事ばかり考えて、 何か一番大切なものを決して見失うな・・・・・・そう言いたい」
「はい」


 リヴァルさんの言葉は何か重みがある・・・・・・そうカズヤは思っていた。
本や知識で得たものを誰かに伝えるのではなく、 経験した事を伝えているような・・・・・・
それが本当なのかは実質分らなかった、 自分の勘違いでもあるかも知れないし、 聴かれたく無い事もあるかも知れない。


「さぁ、 休みすぎると体が冷えて余計に疲れるぞ。 もうひと頑張りして来たらどうだ」
「はい、 行って来ます」


 ただ感じている事、 それはリヴァルさんが自分を気遣ってくれている事は確かだと思う。
でも無ければこんな辺鄙な場所・・・・・・それも初心者相手に何時間も行動を共にしてはくれないだろう。
だから僕はリヴァルさんの言葉を真剣に聞き、 その助言を生かそうと最大限の努力をする。
それが彼女に対するお礼だと思っていたから。


「あ、 これで達成・・・・・・ですね」
「よく頑張ったな」
「ありがとうございます、 リヴァルさんのおかげです」
「それは違う、 私は助言しただけの事。 全てはカズヤ自身の実力だ」


 もう太陽が夕日に近づいた頃、 ようやくノービスから一次職へと転職できるレベルにまでなれた。
何時間戦っていたのだろうか、 それは良く分からなかったが、 ほぼ今日一日中リヴァルさんは傍で見守っていてくれた。


「さあ、 そろそろ帰ろう。 夜になってはプロンテラ周辺といえども危険だ。」
「はい、 分りました」
「転職は明日だな」


 転職する為には試験が必要だと聞く、 その試験にいったい何が必要なのか・・・・・・
それは良く分からないが、 リヴァルさんが明日だと言うからにはきっと時間が掛かる事なのだろう。


「そういえば、 カズヤは何になりたいんだ?」


 リヴァルさんと一緒に居て思ったこと、 そして自分がこの世界で何をしたいか・・・・・・
それを総合すると、 もう答えは見つかっていた。


「はい、 僕は・・・・・・」


 続く