GVが苦手な訳

GVを嫌っている理由ですか?
そうですね・・・・・・色々と理由はありますね。
プリーストという命を救うものが、 命を奪っている。
勿論魔物も同じ生命体だという事は承知しています。
命を奪う事に変わりはありません。
しかし私達と同じ人を討つ事が、
私にはどうしても躊躇ってしまうのかも知れません。


 いえ、 これは綺麗な部分ですね。
確かに始める前は躊躇いますし、 出来れば出たくないと思います。
ただ、 一度でも出てしまったらそこは戦場。
躊躇っていようがいまいがやらなければやられる世界。
無論出てしまえば全力を出して戦います。
仲間が傷ついて倒れていくのを見ているだけなのはとても辛い事ですから。
ただ、 相手を倒して幾たびに感じる痛みは、 多分あの時から消えないのだと思います。
私がまだ、 何も考えないでGVに出ていたあの時から・・・・・・


 私は別の世界にも居ました。
ウィザードとして世界を冒険し、 GVギルドに所属して戦っていました。
ウィザード転職してから間もなく、 GVに参加する要請が出されました。
無論私はまだよくも知らずに参加しました。
ウィザードとして役に立てるのなら参加してみよう、 そう思って。


「進めと言われましても・・・・・・どっちでしょうか?」


 その時、 私はルイーナ砦を攻めている途中でした。
しかし仲間とはぐれ、 フラフラとさまよっている内に一人の聖騎士が現れました。


「敵!?」
「ウィザード一人? 叩いておくか!」


 剣を構えは知ってくる相手に、 私は恐れました。
ただ、 それでも頭は冷静に判断をしています。
騎士ならば体力は高く、 魔法防御は低いかもしれない。
なら、 フロストダイバーで足を止めてから戦うしか・・・・・・
そう判断した次には、 私の唇は詠唱を始めていました。


「フロストダイバー!!」


 氷が地面を走り、 相手の足元に突き刺さった瞬間、
相手は全身を氷で固められ身動きが取れなくなりました。


ユピテルサンダー!!」


 氷付けになった相手は、 その属性も水となる為風系統の魔法が有効になります。
稲妻の球体が衝撃となり相手を包み込み、 電撃によるダメージを相手に与えてゆきます。


数回繰り返したでしょうか、 ファイヤーウォールで接近させる事を防ぎ、
フロストダイバーで凍らせてはユピテルサンダーを打ち込む。
ついに力尽きたのか、 聖騎士が倒れてその場から消えました。


 やった、 私一人でも倒せた・・・・・・
そんな高揚感が生まれ、 ギルドメンバーにも褒められました。
GV終了後、 たまり場でその事について話していました。
メンバー全員が良くやった、 と言ってくれまして、 私は嬉しかったです。
役に立てたんだ、 そう思って・・・・・・


 ただそれが、 どういう意味なのか、
時間が経つにつれて冷静になっていく頭が他人事の様に答えを出しました。


『他人を倒した事を褒められている』


 襲ってくる相手なら仕方ないでは無いか、 そう言い聞かせ考えるのを止め様としましたが、
それからの反省会での雑談が、 私の褒められた行為がどんな事かを知りました。


「それにしても・・・・・・あのWIZ強くて邪魔だよなぁー」
「ああ、 対人慣れて居る感じだしな・・・・・・そこまでして人倒したいのかっての」
「だよなー・・・・・・戦いたくないなら凍らせて逃げればいいじゃないか」
「わざわざ倒しに来るしな」


 ・・・・・・そっか、 私のしていた事もその人と同じなのかな・・・・・・
こうしてメンバーの恨みや辛みを聞いていると、 今まで感じていた高揚感や、
褒められていた嬉しさは逆に罪悪感となってしまいました。
同じ感情をもつ人を倒して、 心を傷つけているのか・・・・・・そう考えて。


 それから数日後、 私はその世界から去りました。


 今では、 またこうしてプリーストとして活動しています。
私がこの世界にきた最初に掲げた思い、 誰かの役に立ちたい、
力になりたい・・・・・・そう思って。
無論私のしている事も間違えているのかもしれません、
GVを今楽しんでいる人が多いことも事実ですし、
今所属している☆EINHERJAR☆はGVをイベントとして、
スポーツみたいなものとして楽しんでいます。
私もそう考え始めているのか、 またマジシャンを育てています。
ウィザードとなる予定でして、 フロストダイバーも覚えています。


 何かがこの世界では違うのかも知れません。
ギルドメンバーの会話から、 恨みや辛みが無いのがその原因なのでしょうか。
・・・・・・考えは変わるかも知れません。
GVを楽しめる日が来るかも知れません。
ただ、 それでも私は忘れないようにしようと思います。
相手も同じ人であるという事を、 ウィザードの時に聞いたメンバーの辛みを。
それがあの世界で学んだ事柄ですから。
GV中でも、 誰かを助け支援する事を忘れないように、
これからも精進して行こうと思います。