Mariaの受難

 私は今呆然としている。
珍しい事だ、 何があってもほとんどの事は予測が出来ていたはずだった。
騎士団の任務が予想外だったのだろうか、 それとも私の予測がまだまだだったのだろうか・・・・・・


「〜♪」
「〜〜♪」


 待て、 落ち着いてよく考えるんだMaria Serve。
現状はどうなっている?
私は一体何をすれば良い?
冷静に、 客観的に考えるんだ。


「はい、 お歌はここまで。 次はお花で遊びましょうか」
『はーい!』


 私は今、 プロンテラ西部広場に居る。
騎士団からの命令でユナ姉さんとKuriaと共にその場に赴いたのだが、
何故か居たのは数人の子供、 国民のようでとても冒険者等ではない。
騎士団から命令される任務のほとんどは、 ダンジョンに赴き魔物の討伐、
及びダンジョン内部の調査、 地図の作成など戦闘が多い。
そう言った任務では私は引けをとりはしない。
何時も鍛錬を怠らないのは、 そう言った任務を確実にこなす為だ。


「Maria、 こっちへいらっしゃい」
「あ、 分かった。 姉さん」


 手招きされ、 姉さんの近くまで小走りに近づく。
子供達の中心で一緒に花を編んでいる姉さんは、 本当に良く似合っていると思う。
無骨な鎧を身に纏っている私とは正反対であろう。
Kuriaも必死に花を編もうとしているのだが、 上手くいかないのか周囲の子供に助言されている。


「ここに座って、一緒に作りましょう」
「・・・・・・わ、 分かった」


 姉さんは子供の相手をするのに慣れているようだ、 柔らかく話し続けている。
対して私は子供達にどう接すれば良いのか分からない。
キラキラと親しみのある瞳を向けてくれるのだが、 私には対処法が無かった。
殺意を向けてくる魔物は自分の手にした槍で貫けば良い。
だがこういった好意を向けてくる、 無邪気な視線に私は慣れていなかった。
額に自分が分かるほど汗がにじみ出てくる。
このようなプレッシャーを感じるのも久しぶりだ。


「Maria」
「な、 何? 姉さん」
「緊張していると、 子供達が怖がるわよ?」
「・・・・・・分かった、 何とかする」


 そう答えたのは良いが、 緊張するなと言われてもどうすれば解けるのかが分からない。
打開するには誰かを参照にするしかないだろう。
一番子供達の扱いに慣れているのは姉さんだ、 ならば姉さんの様にすれはば上手くいくのではないだろうか?


 ・・・・・・笑って子供達と話す事・・・・・・・
そうすれば、 多分子供達は怖がらないのだろう。


「・・・・・・よ、 宜しく・・・・・・」
「うわぁぁ・・・・・・」
「・・・・・・Maria、 逆に凄く怖いわよ・・・・・・」


 自分的には笑ったつもりなのだがどうも上手く出来ていないようで、
逆に子供達を怖がらせてしまった様だった。
姉さんにも怖いと言われる表情は、 一体どんなものなのだろうか・・・・・・・


 結局、 子供達の相手は姉さんにまかせっきりとなってしまった。
私は魔物が来ないか見張りをしていたのだが、 プロンテラ周辺に凶暴な魔物は生息していない。
ただ無駄な時間が過ぎていくだけであった・・・・・・


「MariaにKuria、 お疲れ様」
「・・・・・・疲れた」
「・・・・・・・・・・・・」


 夕方になり、 子供達が帰った後私達も帰路についた。
Kuriaは花の冠を子供達から貰ったらしく、 頭に乗っかっている。
私は結局何も出来ないまま無為に時間だけを過ごしてしまった。


「・・・・・・・・・・・・」
「Maria、 元気出してね。 人間誰しも得手不得手はあるんだから」
「・・・・・・うん」


 姉さんが慰めてくれるが、 私は自分の不甲斐無さに情けなくなっていた。
魔物を倒すだけでは、 駄目なんだという事をマジマジと突きつけられた気がしたからだ。
今回の任務は、 国民にプロンテラ騎士団とプロンテラ大聖堂の活動を知って貰うための一環だったらしい。
姉さんが居なければどうなっていただろうか・・・・・・
いや、 過ぎた事を悔やむ前にやるべき事をやらねば。
明日アーサー ルーンベルグに聞いてみるとしよう。
私が気になっている事を・・・・・・