第二章 『プロンテラ攻防戦』 中編

 闇と光は表裏一体、 光あるところに闇あり。
また、 光あるところに闇あり。
例え絶望的であったとしても、 例えどんなに追い詰められたとしても、
人は希望さえ捨てなければ、 光を見つけられる・・・・・・


 峠での戦いが始まった。
地形的に見下ろす形で布陣したプロンテラの騎士団。
対して闇の軍勢は峠を見上げながら戦わなくてはならず、 戦況は人間側に有利に進んでいた。
しかしその頃、 プロンテラにも不吉な影が忍び寄っていた・・・・・・



「峠での戦いは何とか持ちこたえています。 しかし相手の数がすくないとの報告ですが・・・・・・」
「ゲフェンの守備に回したのでしょうか?」
「いや、 奴等は生命体では無い。 住む場所など失ってもなんとも無い連中だ。 ゲフェンを守る理由が無い」


 峠での戦いが有利に進んでいるはずなのだが、 彼らの議論は続いていた。
トリスタン一世の命令によって有利であるならばあるほど警戒せよ、 との為であった。


「ならば何故敵は数が少ないのだ?」
「それを今議論しているのです」
「やはりゲフェンを守備しているのですよ」
「しかし・・・・・・」
「いや、 もしかしたら・・・・・・」


 議会は紛糾していた。
何故闇の軍勢は数が少ないのか?
何故ゲフェンを守っている必要があるのか?
そこでこの意見が出なかったのは、 彼らが騎士団と戦っているのが主力であると決め付けたからではないだろうか?



《ソロソロカ・・・・・・プロンテラ方面ニ火ノ手ガ上ガルノモ》
《別働隊ガ侵攻ニ成功シマシタ、 我々ノ作戦通リ・・・・・・》
《愚カナル人間共ニ死ヲ、 恐怖ヲ、 絶望ヲ・・・・・・》



「・・・・・・何でしょうか・・・・・・この嫌な風は」
「ハスカさん、 どうかしましたか?」


 そう言いアコライトの少年が私を見上げている。
ごく僅かではあったが、 私は何かが風に混じっているような気がしてならなかった。
でも、 それは確証があった訳でもなく、 私の思い過ごしである可能性も高かった。


「・・・・・・いえ、 なんでもないですよ」
「そうですか・・・・・・あ、 僕お茶を入れてきますね。 なにやらお疲れの様ですから」
「別に良いですよ、 そんな気にしなくても・・・・・・・」
「いえ、 先輩の体調に気をつけるのも私達の仕事ですから」


 そう言ってパタパタと走り、 中央礼拝場を出て行く。
・・・・・・そうですね、 今の嫌な風もちょっと疲れたりしているからでしょうか。
そう思っていた瞬間・・・・・・


続く