戦乙女

 ・・・・・・なんだと?


「北門付近だけなのですか?」
「はい、 その模様です!!」
「直ぐに警備隊に連絡を。 それから騎士団の方々も・・・・・・」


 神父様と教会の組員が何か話しているようだが、 私の耳には何処か遠くで話している気がした。
カズヤは恐らく北門から出ただろう、 ならば帰ってくるのも北門のはずだ。
巻き込まれたら・・・・・・ノービスの彼が助かるはずが無い。


 ・・・・・・また繰り返すのか?
また同じ過ちを犯すのか、 リヴァル。
・・・・・・そんな事させるわけが無い。
もう後悔するのは・・・・・・嫌だ!!!!


「あ、 リヴァル様!?」


 駆け出した事に気づいた神父が声を掛けるが、 止まる気配を見せない。
背がドンドンと小さくなっていく中、 彼らの出来る事は一刻も早く騎士団に討伐を依頼する事だけであった・・・・・・



 プロンテラ北門付近に生い茂る木々が無残になぎ倒されていた。
レイドリック達が無差別に大剣を叩きつけているからだ。


『破壊セヨ! 地上ヲ闇ガ埋メ尽クス時マ・・・・・・』


 その続きをレイドリックがいう事は無かった。
いや、 言えなかった・・・・・・と言ったほうが正しい。
シールドが死神の鎌の様に飛来し、 レイドリックの兜を弾き飛ばしたからだ。


「・・・・・・次」


 投げたシールドを空中でキャッチし、 牛若丸の様に魔物の中へと飛び降りる。
飛び降りながら剣を一閃させると、 オークが一瞬にして真っ二つにされる。
立ち上がり様に振り返り、 上半身を捻りながら剣を薙ぐ。
真後ろから斧を振り下ろそうとしていたオークが、 その剣をまともに受け地面に倒れる。
リヴァルが剣を一度振るうたびに、 オークが悲鳴の雄たけびを上げて地面に倒れていく。


 プロンテラ騎士団が到着した時、 その場で動く者はリヴァルただ一人だった。
純白の鎧は赤い返り血で染まり、 顔のいたる所にも血を浴びていた。
夕日に染まる大地が、 魔物の血を吸ったように不気味に見える。


「・・・・・・後は頼んだ」


 そう一方的に告げると、 騎士達を真横に歩き出す。
プロンテラ騎士達は通り道を作るように自動的に別れ、 彼女を見送った。
奇異と、 恐れの混じった視線で・・・・・・


「・・・・・・覚悟はしていた」


 一人呟く。
そう、 奇異と恐れの入り混じった視線で見られる事など慣れている。
昔の私を知っている者ならば誰だってその視線を向けてくるだろう。
普通の人間ではありえない事だ、 魔力も、 肉体能力もほぼ完璧に近い。
普通ならどれかに偏る能力が全て均等に高い位置なのだ。
魔族なのでは、 という噂すら出たほどだ。


「こんなに血で汚れていたら・・・・・・教会には行けないな」


 教会は神聖な場所だ、 血で汚れた様な者の居るべき場所ではない。
本当ならカズヤの安否を一刻も早く確認したい所だったが、 こればかりはどうしようもない。
家に戻り、 着替えてから行くしか無い・・・・・・


「・・・・・・あ、 リヴァルさん!!」